もし、これまで営業担当者が何年もかけて身につけてきた技術の多くを、AIが代わりに担えるようになったとしたら、企業の営業活動や店舗のあり方は、いったいどう変わっていくのでしょうか。
一方で、人が商品やサービスを選ぶとき、画面に表示された情報だけですべてが決まるとは限りません。
今回は、AIによって変わりゆく営業とマーケティングの姿を考えながら、効率化が進む時代に、あえて人と人が向き合うことの意味を掘り下げてみたいと思います。
売る仕組みが完全に人間の手を離れた?
AIは、インターネット上に蓄積された膨大なデータを分析し、そこから一定の傾向や法則を見つけ出すことを得意としている。
何が売れているのか、どのような商品が消費者に選ばれているのかを調べることはもちろん、販売につながる言葉や文章を組み立てることも、その能力を発揮できる領域だ。
そもそも、マーケティングにおいて文章を構築する作業には、一定のマニュアルが存在する。人間の購買心理を理解し、関心を引き、商品やサービスの必要性を伝え、購入を促すという一連の流れには、これまで多くの企業やマーケッターが研究し、実践してきたノウハウがある。
そして、その知識の相当部分は、すでにインターネット上で公開されている。そう考えると、過去の成功事例やセールスライティングの手法を探し出し、それらを分析して販売につながる文章へと組み立てる作業は、人間が一から考えるよりも、AIに任せた方が効率的な場合が多い。
販売の世界では、相手に商品の価値を伝え、購入する理由を理解してもらえる人間が強い立場に立つ。いわば、言葉を操る能力が営業成績を左右してきたわけだが、その言葉の組み立て方に一定の法則があるのなら、AIがその領域に進出するのは自然な流れだろう。
実際、効果的とされるセールストークやセールスライティングの手法を学習させ、対象となる顧客に合わせて文章を作成させることは、AIが得意とする使い方の一つである。
共感を誘う表現でさえ、過去の文章や購買心理に関する知見を参考にしながら生成できるため、Webサイトを開けば、どこかで見たような販売文句や、AIが作成したと思われる整然としたセールスライティングに出会う機会が増えている。
こうした変化は、単に文章を書く仕事がAIに置き換わるという話にとどまらない。
企業にとって、営業担当者を大勢抱え、教育し、給与や交通費などの経費を負担しながら販売活動を続けることは、決して小さな負担ではない。
一方、Webサイトを通じて商品やサービスの魅力を伝え、顧客自身が情報を比較し、納得したうえで購入できる仕組みを整えれば、従来は人間が担っていた説明や案内の一部をオンラインに移行できる。
さらに、AIを利用すれば、販売ページの文章や構成を短時間で作成することも可能になるため、これまで専門のマーケッターやライター、Web制作者に依頼していた業務の一部についても、必要な人員や外注費を見直す余地が生まれる。
もちろん、これによって各職種が一律になくなると断定することはできない。
しかし、情報収集から販売文章の作成、顧客への説明、購入手続きまでをオンラインだけで完結させる仕組みが整えば、実店舗や窓口で人間が対応することを前提としていた企業であっても、店舗網を縮小しながら販売を続けるという経営判断が現実的になる。
店舗をなくしても売上が好調な企業があるとすれば、その背景には、顧客との接点や販売の仕組みそのものが変化している可能性があるのだ。
ここまで考えると、私がこれまで取り組んできた広告活動も、まさに同じ仕組みを人間の手で実践してきたものだったと気づく。
顧客が何を求めているのかを考え、関心を引く言葉を選び、商品やサービスの価値を伝え、購入へとつながる流れを設計する。
こうした作業を一つひとつ手作業で積み重ねてきたわけだが、今では、その一部をAIが短時間で処理できるようになっている。
長年かけて身につけてきた広告の組み立て方が、特別な技術を持つ人間だけのものではなくなりつつあるということだ。
ところが、私が営んできた施術業には、こうしたオンライン販売の仕組みだけでは完結しない部分がある。なぜなら、施術というサービスは、実際に身体を預け、施術を体験したうえで対価を支払うという性質を持っているからだ。
Webサイトを通じて施術への関心を高め、来店するきっかけをつくることはできても、それだけでお客様との関係が成立するわけではない。
実際に対面したとき、相手の反応や理解度を確かめながら、施術を受ける意味や今後の選択肢を伝え、納得してもらうための働きかけが必要になる。
そのため、施術業では、インターネットを活用した集客だけでなく、リアルの場で人と接する機会をつくるアナログな活動も重要になる。
以前、私の個人ブログ「昭島でほのぼの生活Blog」で紹介した上越市で開催されていたセラピストの祭典や、相模原市で11月7日(土)に開催される健康マルシェのような催しも、その一例だ。
こうした場では、Web上の文章だけでは伝えきれない施術の考え方や人柄を知ってもらい、実際に話をすることで、来院や施術体験への関心を深めてもらうことができる。
もちろん、イベントに参加すれば必ず顧客を獲得できるわけではないが、サービスを受ける前に実物を確かめたり、提供者と直接話したりすることが購買判断に関わる商売では、対面での接点を設ける意味は大きい。
では、このような営業活動にAIをどう活用すればよいのだろうか。私が現時点で考えているのは、まずセールストークの構成や伝えるべき内容をAIに整理してもらい、それを実際の対話に活用するという方法だ。
事前に話の筋道を用意しておけば、伝え漏れを防ぎやすくなり、限られた時間のなかで必要な情報を届ける助けにもなる。
しかし、相手が何を気にしているのか、どの言葉に反応したのか、あるいは説明を続けるよりも話を聞くべきなのかといった判断は、その場の状況によって変わる。
相手の表情や言葉の変化を読み取り、予定していた話の順序を変えたり、質問に応じて説明の仕方を調整したりするには、対面での経験や臨機応変な対応力が欠かせないと私は考えている。
つまり、AIの普及によって、広告文章を作成することや販売の仕組みを設計することは、以前よりも容易になっていくだろう。
しかし、施術業のように、顧客が実際にサービスを体験することによって初めて価値を判断できる商売では、Webで関心を引くことと、対面で信頼を築いて顧客になってもらうことは、別々に考えなければならない。
これまで私が手作業で積み上げてきた広告活動の一部はAIに任せられるようになっても、最後に人と向き合い、その人に合わせた言葉で価値を伝える営業活動まで、すべて機械に置き換えられるとは考えていない。
少なくとも私の施術業では、AIをセールストークの準備に活用しながら、実際の対話と顧客との関係づくりは、人間が担う必要があるというのが、今の私の認識である。
店舗が縮小する時代に対面営業はどこまで必要なのか
私は、集客が必要だった時代に、広告によってお客様を呼び込むための仕組みを完成させていたことを、以前の個人ブログで何度も伝えてきた。
しかし、それは来店したお客様に対して何も話さず、施術だけを提供していたという意味ではない。実際には、会話のなかに、相手が「ここに通ってみたい」と思う決定的な言葉を織り交ぜていたことも、ここで明かしておこう。
もちろん、強引に契約を迫るようなセールストークをしていたわけではない。
広告の段階で関心を持ってもらい、来院する理由を理解してもらえていれば、対面したときに必要なのは、相手の状況に合わせて施術の価値を伝えることだったからだ。
Webマーケティングが十分に機能し、来院前から顧客の理解と期待が形成されているのであれば、従来型のセールストークを重ねる必要性は小さくなる。
しかし、Web上での集客や説明が完成されていない施術業界では、対面での会話が今でも顧客獲得を左右する重要な手段になっている。
ただし、対面営業が有効なのは、施術業のような体験型の商売だけではないと私は考えている。
Webマーケティングを十分に活用している販売業であっても、商品を比較している人の迷いを解消したり、本人がまだ気づいていない要望を引き出したりする場面では、人間の言葉が購入の決め手になることがある。
セールストークとは、単に商品を売り込むための話術ではなく、相手が判断するために必要な情報を、その人に合った形で伝える技術でもあるからだ。
それでも、企業経営という視点から考えれば、今後、リアル店舗を維持することの意味は大きく変わっていくのではないだろうか。商品の情報提供や比較、注文、決済までをオンラインで完結できるのであれば、企業はすべての地域に店舗を構え、大勢の販売員を配置する必要性を見直すことになる。
店舗を減らし、販売の拠点を集約し、日常的な購買はネットへ誘導する。その一方で、実物を確かめたい人や専門的な説明を必要とする人には、限られた店舗や相談窓口で対応する。こうした販売体制への転換は、企業にとって人件費や店舗運営費を抑える選択肢になり得る。
つまり、これからの変化は、単純に営業マンがAIに置き換わるという話ではない。そもそも企業が、人間を介して販売する場面そのものを減らそうとする可能性があるということだ。
WebマーケティングとAIを組み合わせれば、顧客を集め、商品を説明し、購入を促す仕組みを以前より少ない人員で運営できる。
その結果、リアル店舗の縮小が進むのであれば、販売員の仕事が減るだけでなく、店舗に足を運んで接客を受けるという購買行動自体も、今より限られたものになっていくかもしれない。
一方で、店舗を縮小すれば、あらゆる商品が今まで以上に売れるようになると決まっているわけでもない。販売する商品や顧客層によっては、実物を確認する機会や、担当者と直接話せる安心感が購入を後押しすることもある。
だからこそ、企業にとって重要なのは、店舗を残すかなくすかという二者択一ではなく、どの販売活動をオンラインに移し、どの場面で人間が対応する価値があるのかを見極めることだろう。
このような時代において、対面営業の価値は、むしろ使いどころが明確になっていくのではないかと私は考えている。
Webで十分に説明できる商品を、わざわざ人間が一から説明する必要はない。しかし、相手の迷いを読み取り、言葉を選び、納得できる判断へと導く場面では、セールストークが今でも力を発揮する。
AIが文章を作成し、販売の仕組みを整えられるようになったからといって、目の前にいる人間との対話が無価値になるわけではないのだ。
私が施術業で続けてきたのは、まさにその部分だった。
広告によって来院のきっかけをつくり、対面したときには、相手が何を求めているのかを確かめながら、通院する意味を伝える。
これからAIが広告やWebマーケティングの多くを担うようになっても、顧客と直接向き合う必要がある商売では、この役割まで簡単になくなるとは思っていない。
むしろ、リアル店舗が縮小し、人間が接客する機会が減っていく時代だからこそ、対面で交わす言葉の価値を、改めて考える必要があるのではないだろうか。
AIには読み切れない? 人間が最後に確かめたいこと
人間の購買行動を考えるうえで、私が重要だと思っていることがある。
それは、人間には「欲しいものは、できることなら絶対に手に入れたい」という欲求が、表面に現れているかどうかにかかわらず、存在するということだ。
もちろん、欲しいものが簡単には手に入らないとわかれば、人は妥協する。費用が高すぎる、時間がかかりすぎる、期待した結果が得られる保証がない。
そうした条件を前にして、いったん諦めたり、今の状態を受け入れたりすることは珍しくない。
しかし、それは必ずしも、欲求そのものが消えたことを意味しない。妥協した状態を受け入れながらも、どこかで解決策を探し続けている場合があるのだ。
とりわけ健康に関する悩みでは、こうした心理が表れることがあると私は考えている。長年の不調を抱え、さまざまな方法を試しても満足できる結果が得られなければ、いつしか「この程度なら仕方がない」と自分に言い聞かせるようになる。
それでも、もし本当に解決できそうな方法に出会ったらどうだろうか。これまで諦めていた人が、改めて時間や費用をかけてでも、その可能性を確かめたいと思うことは十分に考えられる。
ただし、実際にどこまで費用をかけるかは、本人の経済状況や期待できる効果、リスクの受け止め方によっても変わる。
私が注目したいのは、こうした妥協の裏側に残っている欲求である。本人がすでに諦めたような言葉を口にしていても、何を求めているのかが完全に整理されているとは限らない。
自分でもうまく説明できない期待や、これ以上失敗したくないという警戒心が入り交じり、何を基準に次の選択をすればよいのか、わからなくなっていることもある。
それが根底にある理由の一つだとすれば、失敗するリスクをできるだけ小さくしようとするあまり、納得できる結果が得られるかどうかを確かめるために、比較的安価な体験を繰り返してしまうのではないか、とも考えられる。
また、AIに相談する場合、利用者は自分の症状や希望、困っていることなどを言葉にして伝え、それをもとに回答や提案を受け取る。
しかし、自分が本当に何を求めているのかを十分に整理できていなければ、質問そのものが、本人の欲求を正確に表していない可能性もある。
AIが的確な回答を返すためには、利用者が情報を追加したり、質問の仕方を変えたりすることが必要になる場合がある。
一方、対面であれば、相手が自分から欲求を明確に言葉にしなくても、会話の途中で見せる表情や声の調子、反応の変化などから、何に迷い、何を気にしているのかを探ることができる。
そこで得られた手がかりをもとに、説明する内容や言葉の選び方を変え、相手が求めているものに近づくための選択肢を先回りして提示することも可能だ。
つまり、対面営業で重要なのは、用意したセールストークを一方的に話すことではない。
相手がまだ十分に言葉にできていない欲求を探り、それに応える可能性のある提案を、本人が判断できる形で差し出すことなのだと私は考えている。
購買者が求めているのは、単に商品の説明を受けることだけではなく、自分でも整理しきれていなかった問題に気づき、その解決に向けて納得できる選択肢を見つけることなのかもしれない。

