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抜本的なオイルマネジメント

~「油を選ぶ」から「脂質の摂り方そのものを考える」へ

本来の油の役割と現代の食に潜む違和感

私はもともと、植物油をできるだけ避け、必須脂肪酸は食材から摂る方がよいという考え方をしていました。

昨年、とある筋肉系雑誌で「オイルファースト」という考え方を知ったときも、興味を持ったのは、その理論が自分の考えとどこまで一致するのかを確認したかったからです。

食事の最初に油を摂取することで血糖値の急上昇を抑え、インスリン分泌を緩やかにする。その結果、脂肪の蓄積を抑え、ダイエットにつなげようとする理論です。

確かに、血糖値の急上昇を抑えられれば、脂肪が蓄積しにくくなるという考え方には一定の説得力があります。ただ、読み進めるうちに、やはり自分が以前から感じていた疑問に戻ることになりました。

それは、「どの油を選ぶか」という機能面だけではなく、「そもそも油そのものをどう考えるか」という問題です。

◆脂肪酸には大きく分けて二種類ある

脂肪酸には、大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。飽和脂肪酸は、肉の脂身や乳製品、ココナッツオイルなどに多く含まれる脂肪酸です。

エネルギー産生に必要な脂肪酸であり、身体にとって欠かせないものですが、過剰摂取は血中LDLコレステロールなどに影響し、循環器疾患(動脈硬化や心筋梗塞)のリスクとの関連が指摘されています。

一方、不飽和脂肪酸には細胞膜を構成したり、生理活性物質の材料になったりするものがあり、身体の機能維持に重要です。不飽和脂肪酸はさらに、オメガ3、オメガ6、オメガ9などの脂肪酸があります。

•オメガ3:アマニ油、えごま油、しそ油、青魚

•オメガ6:ごま油、大豆油、コーン油

•オメガ9:オリーブオイル、こめ油、なたね油

一般的な栄養学では、オメガ3系脂肪酸は不足しないよう摂取することが重要とされています。循環器疾患との関係や血中脂質への影響について多くの研究があります。

ただし、オメガ3系脂肪酸は非常に酸化しやすいという弱点があります。アマニ油やえごま油に含まれるα-リノレン酸は、熱・酸素・光に弱く、加熱すると酸化しやすいため、一般には加熱を避け、生食で利用されることが多い脂肪酸です。

一方で、現代の食生活では、オメガ6系脂肪酸の摂り方についても考えてみる必要があります。

オメガ6系脂肪酸に多く含まれるリノール酸は、摂りすぎるとHDLコレステロール(善玉コレステロール)を低下させたり、炎症性物質を増やしたりするのではないかと指摘する研究者もいます。

特に、大豆油、コーン油、紅花油などのオメガ6系植物油の高温加熱によって、ヒドロキシノネナールなどの有害な類が生成することが報告されています。こうした酸化生成物が動脈硬化や炎症反応にどのような影響を与えるのかについては、研究が続いています。

そのため、加熱調理では、比較的酸化されにくい一価不飽和脂肪酸(オメガ9系のオリーブオイルやこめ油)を多く含む油を選ぶという考え方もあります。

現代の食と病気の増加をどう見るか

私は以前、ブログ「滋味美動3(※掲載停止中)」の中で、日本人は本気で食事を見直す段階に来ているのではないか、というテーマで、増加傾向にあるがんについて触れたことがあります。

現在、日本では年間およそ38万人ががんで亡くなっており、死亡者数そのものは高い水準で推移しています。また、がんの罹患数についても長期的には増加傾向にあり、明確な減少局面には入っていません。

一般的には、食の欧米化やインスタント食品の普及が原因として挙げられることが多いですが、私はこれだけでは少し説明しきれないのではないか、という違和感を持っています。

というのも、日本では戦後、食品添加物の使用が制度化され、1950年代以降、保存料や着色料などを使用した加工食品が広く普及していきました。1947年の食品衛生法制定時に始まった食品添加物の指定制度は、その後対象が拡大し、令和6年3月1日法改正時では指定添加物だけで476品目に及んでいます。

もし、こうした加工食品の普及そのものが現在のがん増加の主因だとすれば、もっと早い時期から顕著な増加として現れてもよいのではないでしょうか。

ところが、実際にがんの増加が目立つ時期には、もう少し時間的なずれがあります。特に、子宮系のがんでは、1990年代後半以降、若年層での増加が目立つものもあります。

一方、1980年代には、植物性油脂の「コレステロールを含まない」「ヘルシー」といった健康イメージが広がり、洋食化や外食、加工食品の普及とともに、油脂を使う食生活も広がっていきました。

私はこの流れを見たとき、現代に増えているさまざまな疾患の背景に、植物油の摂り方が何らかの形で関係しているのではないか、という疑問を持つようになりました。

もちろん、これは現時点で私が証明できることではありません。植物油そのものが健康に悪いということが一般的な医学的結論になっているわけでもありません。

それでも、増加しているがんの中には、乳がんや子宮系のがんのように、脂質代謝との関係について研究されているものもあります。また、植物性油脂と炎症との関係についても、さまざまな見方があります。

もし、植物性油脂の摂り方と身体の炎症反応との間に何らかの関係があるとすれば、炎症を背景として発症・進行するさまざまな疾患についても、食生活という視点から考え直す余地があるのではないでしょうか。

(整体が取り扱う関節や筋肉の硬い状態、あるいは長期にわたる動きたくない気分、身体がダル重い、疲れやすいなど、健やかでない状態にも炎症体質が何らかの形で関わっているのではないかと、私は考えています。)

現在の食環境を見てみると、多くの加工食品や調理済み食品で、植物油が原材料として使われています。ねりわさびやねりからしのような調味料、お惣菜、さらには一部の米飯製品や焼き菓子に至るまで、想像以上に広範囲に使われています。

また、外食では使用されている油の種類や量を把握することが難しく、「知らないうちに摂っている」状況になりやすい。

健康志向の文脈でも、オリーブオイルやごま油をサラダに多量にかけるような場面が見られますが、これもまた「油を足すこと」が前提になっている発想です。

後の段落で詳しく記述しますが、もし、現代の食生活においてリノール酸からγ-リノレン酸への代謝が十分に行われていないとすれば、過剰に摂取されたリノール酸は体内に蓄積され、炎症や動脈硬化、アレルギーにどのような影響を及ぼすか考えてみる必要があります。

さらに、加熱や酸化によって生じるヒドロキシノネナールのような酸化生成物が体内に蓄積されるとすれば、その影響は無視できません。

また、α-リノレン酸を含む油も酸化しやすく、過酸化脂質へと変化した場合は、血管の老化や炎症の慢性化に何らかの影響があるかもしれませんし、加えて、これらはいずれも種子由来である以上、種子特有の成分に対する視点も必要になります。

◆しかし、私は油の「機能」だけでは足りないと思った

ここまでの話は、あくまで脂肪酸の機能面から見た油の評価です。しかし、私は途中から、「その油が何から作られているのか」という原材料側の視点が抜け落ちているのではないかと思うようになりました。

植物油の多くは、種子から作られます。そして、油は非常に濃縮された食品です。例えば、大豆油大さじ1杯(12g)を作るためには、乾燥大豆が約60g必要とされます。

乾燥大豆60gを、普段食べる大豆の状態に換算すると、水で戻した場合には約2.3~2.5倍、つまり約140~150gになります。

つまり、炒め物、揚げ物、フライ、ドレッシングなどを合わせて、日常的に大さじ1杯の油を使うということは、約150gの大豆に含まれる油分を取り出し、濃縮して摂っているのと近いイメージになります。

また油は、単にカロリーの塊ではありません。原料に含まれている成分も一緒に濃縮されています。栄養素には水溶性と脂溶性がありますが、水溶性は汗や尿で排出されやすい一方、脂溶性の物質は身体に蓄積しやすい特徴があります。

身体の中での脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪だけではありません。神経を覆う絶縁体も脂質ですし、また脳も水分を抜けば60%近くは脂質で形成されています。

もし原料に望ましくない成分が含まれていれば、それもまた濃縮された形で体のさまざまな脂質の部位に蓄積されることになりかねません。

また、植物性油脂由来の酸化脂質がもともとある健康的な脂質(例えば、神経伝達の放散―隣接する神経線維への信号漏れを防ぐ絶縁体の役割を果たす髄鞘などの脂質)をそぎ落とし、マヒや筋肉の過剰なけいれん状態などを起こしてしまうリスクも言及されています。

◆化学精製油と圧搾油、それぞれの問題

一般的な植物油は、粗油を食品として使える状態にするために、脱色・脱臭・脱酸などの精製工程を経ます。

その際、ヘキサン、リン酸、苛性ソーダ、塩酸、硫酸、活性白土といった普段の食卓では聞き慣れない物質が工程ごとに使われることがあります。

こうした工程を知ると、「食べ物になるまでに、ここまで化学的な処理をする必要があるのか」と感じる人もいるでしょう。

そこで注目されるのが、昔ながらの圧搾法です。圧搾法は、原料に圧力をかけて油を絞り出す方法で、化学溶剤を使わず、原料本来の風味や香りが残りやすいのが特徴です。

しかし、圧搾法なら完全に安心かというと、私はそうとも言い切れないと思っています。

なぜなら、植物油の原料の多くは種子であり、種子には本来、自分を守るための成分が含まれているからです。

◆種子には「自分を守る成分」が含まれている

種子は、適切な環境になるまで発芽しないよう、自らを守る仕組みを持っています。その一つが酵素阻害成分です。玄米、ナッツ類、大豆などには、発芽前に栄養を守るための酵素阻害物質が含まれています。

では、こうした原料由来の成分は、油に加工される過程でどうなるのでしょうか?

また、穀類、落花生、ナッツ類、とうもろこし、乾燥果実などには、保存状態によってはカビ毒であるアフラトキシンが生じることがあります。アフラトキシンは強い発がん性を持つことで知られており、肝障害や遺伝毒性との関連も指摘されています。

もちろん、通常の食品管理が行われている環境では過度に恐れる必要はありません。

しかし、油は原料を濃縮した食品であるため、「少量なら問題ないものが、毎日積み重なることで無視できなくなるのではないか」という視点は必要だと思います。

◆必須脂肪酸は油ではなく食材から摂る方が自然?

植物油を完全に避けるとしても、必須脂肪酸は身体に必要です。必須脂肪酸の代表は、リノール酸とα-リノレン酸です。そのため、私は油そのものではなく、食材から摂る方が自然だと考えるようになりました。

リノール酸は玄米などの穀類から、α-リノレン酸は体内でDHAやEPAに変わりますから、DHA・EPAは青魚で摂る。ただし、毎食玄米と青魚だけでは飽きてしまいますし、現実には不足しやすい栄養でもあります。私自身も、毎食玄米や青魚だけで必要な脂質を補うわけにはいきません。

実際、脂質が極端に不足すれば、皮膚の健康にも影響する可能性があります。そのため、脂質を減らしすぎるのではなく、「どの形で摂るか」を考えることが重要になります。

◆炎症を起こす脂肪酸と炎症を抑える脂肪酸

ここで、私が植物油よりも食材を重視する理由がもう一つあります。それは、必須脂肪酸は単に「不足すると困る栄養素」ではなく、最終的には免疫や炎症反応を調整する物質の材料になるからです。

一般的には、リノール酸は体内でγ-リノレン酸に代謝され、さらにジホモγ-リノレン酸・アラキドン酸へと変化していくと説明されます。

そして、アラキドン酸は炎症反応に関与するプロスタグランジンE2の材料となり、ジホモγ-リノレン酸は炎症反応を抑える方向に働くプロスタグランジンE1の材料となります。

つまり、身体に必要なのは「炎症を完全になくすこと」ではなく、炎症を起こす力と抑える力の両方を持ち、そのバランスを保つことです。

発熱、傷の修復、免疫反応などには一定の炎症が必要ですし、一方で炎症が過剰になれば、皮膚炎、動脈硬化、自己免疫的な不調につながります。そのため、炎症を起こす側の脂肪酸と、炎症を抑える側の脂肪酸の両方が必要になります。

ここで問題になるのが、リノール酸からγ-リノレン酸への代謝です。一般には、リノール酸を摂れば体内でγ-リノレン酸に変換されるとされます。

一方で、リノール酸からγ-リノレン酸への代謝が、現代の食生活では十分に行われないのではないかという見方もあります。こうした考え方は、分子栄養学の分野で長く論じられてきたものです。

トランス脂肪酸を避けることは比較的容易ですが、飽和脂肪酸は獣肉や乳製品に含まれ、エネルギー産生に必要な脂肪酸でもあるため、完全に避けることは現実的ではありません。

そう考えると、獣肉を日常的に食べる現代人は、リノール酸を摂っただけでは十分にγ-リノレン酸まで代謝されていない、そうした可能性を指摘する考え方があります。

では、γ-リノレン酸そのものを摂ればよいのかというと、代表的な供給源は月見草油です。しかし、私自身は植物油そのものに否定的であり、月見草油も種子由来である以上、種子毒や酵素阻害成分の問題を避けられないと考えています。

そのため私は、代謝の途中を期待するよりも、その先にある脂肪酸を直接食材から摂る方が合理的ではないかと考えています。

具体的には、

•アラキドン酸は卵黄、肉類、ホルモン系食品

•ジホモγ-リノレン酸は乳脂肪

•炎症抑制に働くDHA・EPAは青魚

という形です。

※α-リノレン酸も必須脂肪酸ですが、体内でEPA(エイコサペンタエン酸)を経てDHA(ドコサヘキサエン酸)へと代謝され、血管の健康維持や炎症抑制作用、脳・神経細胞の機能維持に役立ちます。

分子栄養学の三石巌氏は、α-リノレン酸からEPA、DHAへの代謝について、特に男性では効率が低いという考え方を示しています。私はこの考え方から、代謝を期待するよりも、EPAやDHAを含む青魚を直接食事から摂る方が効率的だと考え、青魚で補給するようにしています。

私は、牛乳は1日100ml程度を目安にしています。300ml程度が推奨されることもありますが、乳脂肪と一緒に界面活性作用のカゼインや、不耐症の一因にも数えられる可能性が浮上している(研究者は現段階では仮説扱いとしている)ホエイも摂ることになるため、私自身は過剰には摂らず、青魚由来のDHA・EPAとのバランスを見ながら、炎症を起こす側と抑える側の脂肪酸を調整しています。

もちろん、「リノール酸からγ-リノレン酸に代謝されにくい」という話は、まだ仮説段階の部分もあります。そのため、私自身も玄米は相当量食べています。万が一、リノール酸からγ-リノレン酸への代謝が正常に行われるとしても、玄米には脂肪酸以外にも食物繊維、ビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれているため、摂る価値は十分にあると考えています。

◆私自身の現在の結論

私自身は、植物油はできる限り避け、脂肪酸は食材から摂るようにしています。

具体的には、

•アラキドン酸は獣肉や卵黄

•ジホモγリノレン酸を意識して乳脂肪を少量

•DHA・EPAは青魚

•リノール酸は玄米や少量の豚肉の脂肪

という形です。

乳製品については、三石巌氏の著書『食品の正しい知識』他にも、ジホモγ-リノレン酸を乳脂肪から摂るという考え方が示されています。また、著書の中で、牛乳は一日300ml程度という考え方も示されていますが、乳脂肪と一緒に界面活性作用を持つカゼインも摂ることになるため、私は、牛乳は100ml程度を目安にしています。

また、DHA・EPAによる炎症抑制作用とのバランスも考えながら、脂肪酸の摂り方を調整しています。

一般的には「どの植物油が健康に良いか」が語られがちですが、私はむしろ、「油という濃縮された食品をどこまで日常的に使うべきか」を考える方が大切だと思っています。 その結果として、植物油を足すよりも、肉、卵、乳製品、玄米、青魚といった食材そのものから脂肪酸を摂る、という方向に落ち着いています。