自律神経と言えば、体の様々な組織を自動調整している神経だとか、内臓の生命維持装置だとか、さまざまな説明やたとえがありますが、いまいちイメージが掴みづらいという声を聞きます。
では、一体何にたとえるとわかりやすいのでしょうか?
私なら自律神経は”心と体を仕切る壁”と答えます。もっと具体的にすれば、
心の状況が直接、体に連動しないように壁の役割を果たしている
イメージで表現するならば↓になります。
えっ、心と体はつながっていた方がいいんじゃないの?という意見も聞きますが、ちょっと心配になったり、不安になる度にいちいち体が反応して、胃が痛くなったり、下痢したり、気分が悪くなったり、息苦しくなる症状に見舞われたら、安心感のある安定した生活はなかなか送れませんよね。
だから、上の図のようにストレスがかかってもすぐに体が反応しないように自律神経が壁の役割を果たしてくれているわけです。
ところが、仕事や生活で思い通りにいかないことが続いたり、我慢を強いられたり、人間関係の問題で長い間不安を抱えたり、で情動がストレス化すると、体内で活性酸素という毒物に変換されます。
この活性酸素という物質は(強い酸化力で)細胞を破壊する力があるため、過剰に発生すると自律神経に悪影響が及んで乱れていきます。
また、活性酸素の発生と同時に、皮膚、骨、筋肉のたんぱく質が分解され副腎から抗ストレスホルモンが分泌されます。
そして、情動ストレス⇒活性酸素⇒抗ストレスホルモンの分泌というサイクル(=悪循環体質)が続くと、筋骨格と皮膚は弱っていき、冷え、むくみ、脱毛、じんましん等に悩まされたり、突然めまいが起きたり、体の力が抜ける感覚に襲われたりすることも。
悪循環が長く続き過ぎると、代謝や体力、抵抗力も落とし、免疫力が低下するという事態にも発展しかねません。
さらに悪循環体質が慢性化し、肉体疲労(=筋弱体による疲労)が全身に行きわたることによって活性酸素の量が増大し、ついに壁に穴があき、心と体が直でつながってしまいます。
こうなってしまうと、もはやほんの少しの量の情動ストレスでも、内臓が過敏に反応し症状が発生します。この段階に来て自律神経失調といいます。
ただ、実はこの病的な状態でも、(自律神経の可塑性が起こっていないため)自律神経失調症においては始まりにしか過ぎません。この先のことは、パニック・自律神経失調症の症状説明ページ初期判定の【本格的な自律神経失調の症状が始まっている段階】に記載してあります。ぜひチェック項目を確認して判定を受けてみてください。
※情動ストレスは種類によって引き起こされる症状が違います。例えば、同じ腸の症状でも、悲しみの情動ストレスは便秘を発生させますが、怒りの情動ストレスの場合は下痢を発生させます。
<参考文献>
『21世紀の医学』 浅見鉄男(著) 『活性酸素の話』永田親義(著) 『からだの中から健康になる長寿の秘密』 三石巌(著)『よくわかる!脳とこころの図解百科』厚東篤生・濱田秀伯(著)『体からのシグナル』ジャン・ピエール・バラル(著)『ストレスと筋疼痛障害』ホーカン・ヨアンソン(著) 『ストレスであなたの骨がゆがんでます!』山口純子(著)